マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

○○未来会議の限界

同業他社と比較すると、直接、地域に赴いて意見交換を行ったり、施策を展開したりすることが多いため、我が社のノウハウや知見に興味を持っていただいた方から、地域や観光地づくりのためのメンバーやアドバイザー就任をお願いされる機会が増えてきました。

「地域との連携」をモットーに、事業に取り組んでいるので、地域側からのこのようなお声掛けには感謝をしています。

一方で、私から見て、会議のあり方や運営に関して多くの課題を抱えており、スタッフの数や予算などリソースにも制約がある中では、積極的に関与するというわけにはいかない事情もあります。

政府が「地方創生」を掲げて以来、全国各地で「○○未来会議」と題する住民参画型の街づくり・地域おこしの会議が、体感的に増加しているような気がします。

この類いの街づくり・地域おこしのムーブメントが、経済的動機によらない、いわば地域住民の意識醸成(=シビック・プライド)を目的としているのであれば、それはその街・地域のブランドアイデンティティのようなものであるから、制約条件なしに、大いに語り合えば良いと思います。

しかし、ここに地域経済の活性化という経済的動機が含まれているのであれば、地域住民の意識醸成という街・地域側の問題で片付くわけではなく、視野を都市外・地域外へと広げる必要があると同時に、「都市間・地域間競争」という概念も強く意識する必要があります。

住民が自らの地域を考え、アクションを起こす第一歩とすることは重要なことだし、それを否定するつもりはありません。

ただ、住民参画型の会議を開催し、住民意識の醸成をすることは、街づくり・地域おこしの十分条件を満たしているにすぎず、必要条件を満たしているとはいえないと思います。

では、必要条件とは何か?

それは、街や地域を活性化するために必要な交流人口や関係人口を増やすための手法と、それを支える分析やデータ

少子高齢化や過疎化が進む中で、自らの都市・地域の住民やリソースのみで活性化を図ろうとするのは難しく、外からのヒト・モノ・カネ・情報を流入させることにより、域内に存在するリソースと結合させ、イノベーションを起こしていく必要があります。

自らの都市・地域のみを議論し、語ることは、全てを自給自足でまかなう閉鎖体系の中では可能ですが、日本全国の都市・地域のどこを見ても、そんな鎖国体制を取っている所は存在しません。

どの都市・地域も、域外からのヒト・モノ・カネ・情報の獲得に躍起になっている状況であり、そこでは、都市と都市、地域と地域との間で競争が起きている状況です。

そして、その競争は、域外の住民(消費者)や企業(投資家)に自らの都市・地域を如何に選択してもらえるのか、というマーケティングの問題に密接に絡んでいます。

ゆえに、地域経済の活性化を目的とした未来会議を開催するのであれば、そこに当該都市・地域に関するマーケティング分析の資料が用意されないことには、自由なアイディアを持ち寄るだけのアイディア大会で終わり、会議終了後の具体的なアクション・プログラムは期待できないことになります。

具体的なアクション・プログラムがまとまらなかったので、都市・地域に大きな変化は起こらず、また「会議を開いて皆で議論しよう」ということになり、手段であったはずの会議が目的化していくというプロセス化が進んでいきます。

バラ色の未来を描く前に、自らの立ち位置を確認すること。

そのためには現状に至った要因(そこには自己否定や反省が付きものですが)を明らかにしなければならないし、そこで住民を含めた関係者の合意形成を図るのであれば、客観的な分析やデータ、更に言えば、マーケティング戦略までが求められます。

政府の地方創生も第1期の5年が経過し、第2期に突入しようとしていますが、この5年間の総括を行うことなく、同じ轍を踏む都市・地域が連綿と続いていることこそが、地方創生の課題であるように思えます。

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション