コロナ禍が長引くにつれて苦しい状況に追い込まれている航空業界の新たな動きとして、よく目にするようになった、この類いの記事。
アフターコロナの迅速なリカバリーのため、現業スタッフを中心とした解雇に踏み切るのではなく雇用を維持したい航空会社の論理と、航空会社の縮小により航空路線ネットワークの縮小(=路線撤退)を回避したい地域側の論理という、お互いの意図や思惑が交錯しての動きだとは理解しつつも、個人的には、ものすごく大きな違和感を覚えます。
「CAが街でチラシ配り」の裏に… CAならではの地域貢献 JALで事業部として本始動(乗りものニュース)#Yahooニュースhttps://t.co/2AVkJ7CD5A
この手の話は食傷気味です😥
— マキアヴェッリ先生 (@EPYON_FELIX) April 3, 2021
お互いの意図や思惑が上記の通りであるならば、そのように明言すれば良くて、余計なことを一切発信する必要はないのですが、短期的な双方の利害を一致させるための大義名分(方便)のため、中長期的な取組が重要な「地域創生」を持ち出すから、話が複雑化します。
これは発信側(航空会社)の問題なのか、あるいは、受け手側(プレスリリースを記事化したメディア)の問題なのかはわかりませんが、「CA派遣によって地域が救われる」みたいな鼻につく記事が多々見受けられます。
地域創生の現場では、既に多くのプレイヤーが、長年にわたり地道に取り組んできており、航空会社の多くはこれまで蚊帳の外であったはずで、そのような現場の方々の思いや活動に思いを馳せず、後から参入してきた新参者が、さも自分たちが救世主であるかのような発信内容に失笑を禁じ得ません。
このようなことを言うと、「いやいや弊社の機内誌で地域の記事を取りあげてきましたよ」とか「地域の特産品を機内食で採用しました」とか「〇〇してあげてます」という上から目線の反論を聞くので、航空会社の方々には「あなた方の地域創生のKPI(Key Perfomance Index:重要業績指標)とはそんなもんなんですか?それは地域側のKPIと大きく懸け離れてますよ」と爽やかに再反論して、沈黙させています。
各社の担当レベルがこの程度の認識であることはやむを得ないと思いますが、もし上層部まで含めてこの水準なのであれば、相当深刻な問題であると言わざるを得ません。
航空業界は、業種としては交通・運輸業ですが、同業種内で見ても様々な規制が強く残っているし、更に言えば、需要が伸びる中でも、長年にわたり寡占状態が続いてきた、民間ビジネスの領域とはいえ、かなり特殊な業界であるという認識しています。
資金や情報、ノウハウにマンパワーと、とにかくリソースが不足している地域において、ひとつの課題を解決するにしても、生半可な努力や覚悟で太刀打ちできるはずはなく、定められたルールや踏むべき手続きを遵守したり、丁寧な接遇を心掛けたりといったキャリアやスキルでは、到底フォローし得ない課題が多々あります。
要は、存在している課題とその解決に必要なスキルセット(人材)との間にミスマッチやギャップが生じているのではないかという懸念です。
地域創生に対して中長期的にもコミットメントするのであれば、やはり本業であるところの「人や物の移動・輸送手段を提供する」という部分に、地域経済の活性化や地域振興のための「仕組み=プラットフォーム」(アナログであれ、デジタルであれ)を戦略的に構築していくことを視野に入れるべきで、その戦略やロードマップがないのであれば、どんなに綺麗事を並べても、共に闘うべき同志とは言えないですね。