チームのために毎週配信しているメールに掲載したコンテンツの公開版です。
今週の注目キーワードは「文化的価値」。
富士山が世界遺産登録から10年を迎えたということを記事で知りました(情報ソース)。
日本最高峰の山ということで、登山者からも人気で、過密登山と呼ばれるオーバーツーリズムが懸念されています。
私も、今年は富士山登山に挑戦しようと思っていましたが、こちらの記事を読んで、登る山を変更しました(笑)
また、世界遺産(特に「文化遺産」)あるあるなのですが、登録直後は訪問者や観光客が増えるのですが、時間の経過とともに漸減していき、やがては抜本的な対策が必要になることも。
今回取り上げた富士山でも、世界文化遺産登録に力を入れた静岡県側において、思ったような効果が挙がってないことが指摘されています(情報ソース)。
お役所はマーケティングが苦手なので、常にサプライサイドの取組から始めます。
世界自然遺産や世界文化遺産のみならず、世界農業遺産などにも果敢に手を出している(情報ソース)のですが、「UNESCOやFAOなどの国際機関が認定してものだから価値あるもののはずだ」という思い込み(私はそれは「権威主義」だと思っていますが)から始まり、価値あるものだから認定されれば、世間の人はありがたがって、それを観に来るだろうというのは見通しの甘さを感じます。
同じ価値であっても、経済的価値は価格や費用などの概念を使って、費用便益分析という経済学的手法で理解することは可能なのですが、文化的価値については、一概に定まった尺度がないことが課題です。
文化的価値を、重要な構成要素に分解して、概念整理を試みた事例を御紹介すると、文化的価値は以下の要素で構成されていることになります(デイヴィッド・スロスビー[2002]『文化経済学入門』,p.56)。
- 美学的価値
- 精神的価値
- 社会的価値
- 歴史的価値
- 象徴的価値
- 本物の価値
文化的価値の取扱いが難しいのは、上記の価値が人によって捉え方や感じ方が異なるからです。
複雑な問題を後回しにして、自分たちが取り組みやすい、扱いやすい部分だけを一生懸命頑張っても、結局のところ、そこに価値を感じてくれる顧客を獲得できなければ、認定されても遺産を保存するための維持費だけがかかるという結果になりかねません。
これは、日本遺産にしても同様の課題になっているので、我々が難しい問題に臆することなく挑戦して、その解決策を見出せるのであれば、貴重な文化財を後世に伝えるとともに、地域活性化にもつなげるという現在と未来の価値ある仕事を果たせると思います。