マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

2023Aug.28 Weekly Report:地域経済サーベイ

チームのために毎週配信しているメールに掲載したコンテンツの公開版です。

JR西系、環境配慮の宿泊プラン

JR西日本グループの​​ジェイアール西日本ホテル開発が始めた、二酸化炭素(CO2)排出量を相殺する「カーボンオフセット」の宿泊プラン販売開始の記事。

カーボンオフセットに取り組んでいるとは言うものの、事業全体あるいは他事業との連携(例えば植林事業など)で二酸化炭素排出をゼロにしているわけではなく、国の認証制度「J-クレジット」を購入して相殺したとみなす仕組みを活用するに止まっているのが残念。

JTBが早々と打ち出した「CO2ゼロ修学旅行」についても、二酸化炭素排出量分のJ-クレジット購入額を旅行代金に上乗せするだけで、旅行商品の枠組みの中だけで考えていたら、このような取組に落ち着かざるを得ないことがわかりました。

某航空会社が取り組むSAFも同様の文脈で、個人的には「金で解決」という最も安易な方法に見えてしまい、こういう取組の延長線にあるのは顧客の離反、あるいは、意識の高い顧客の引き留めに過ぎず、新たな顧客の創造にはつながらないと思います。

金で解決する以外の新しい枠組みを追求することこそが価値あることと考えます。

 

(岐路に立つローカル線)芸備線(上) 山間部の廃線、増す現実味

日本経済新聞の地域経済面で時折組まれる特集で、地方の公共交通路線維持が苦境に立たされていることを記事で追い掛けています。

「岐路に立つローカル線」というキャッチコピーのとおり、廃線か、維持存続か、という重要な問題を巡り、運営企業、地元自治体、沿線住民などそれぞれの立場の主張や取組が紹介されています。

ただ、私の経験や人脈を踏まえて、悲しい現実を申し上げると、「路線を廃止したい企業、ほぼ諦めてはいるものの住民の声を意識して努力する姿勢は見せたい自治体、まだ何とかなるはずだと需要創出に一生懸命に取り組む地元住民」という構図になっています。

その中でも、我々のビジネスチャンスの部分は、ほぼ諦めかけている自治体に対して、少しでも沿線が盛り上がり、需要創出につながる取組を示すことができるかどうかと考えます。

「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という名言のとおり、まだ諦めるのは早いということを我々の施策で示していければと思います。

 

ひたち海浜公園、園内宿泊の社会実験

ひたち海浜公園で、キャンプ場を含む宿泊施設を運営した実績がある民間事業者を募り、園内の一角に設営するテントを宿泊場所とする事業形態を実験する取組が始まります。

昨今のキャンプブームに乗って、テント泊が増えているようですが、他方で無秩序なテント泊により事件や事故が相次いでいることもあり、より安心・安全なテント泊を追求する動きであると認識しています。

このようなテント泊の動きについても、「新しい旅行」のスタイル創出の一環であり、こういう顧客の変化を捉えて、どこでマネタイズをするかを考える必要があります。

今回の取組の主体は国土交通省(関東地方整備局)で、新しい旅行スタイルや観光コンテンツを創る動きは国や自治体が中心となるので、国や自治体と入口部分から意見交換や協議を行える関係作りを進めていきたいと思います。

 

SDGsに触れる旅 推進

サステナブル・ツーリズムの動きのひとつを御紹介。

金沢市が中心となり、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げる環境保護や地域文化の継承といった指標を定め、条件を満たす観光事業者を認定する制度を開始しました。

金沢市は20年度に「SDGs未来都市」の選定を受けて、市民生活と調和した持続可能な観光振興を目標に掲げており、SDGsツーリズム推奨制度などを始めることで、意識が高い観光客を呼び込み、市民生活との調和を目指すらしいのですが、独自の認証制度にどれだけの効果(価値)があるのか疑問です。

SDGsよりも先を行き、国際的なネットワークを形成している「スローシティ」の認証制度も約20年間で世界33ヶ国287都市(2022年4月1日現在)に止まっている中で、金沢市独自の認証制度がどれだけの意味を為すのか。

行政にありがちなのですが、ブランドを顧客の認知(需要サイド)の問題と捉えず、供給サイドの問題と捉えて、地域側のことを一生懸命にやりがちなんですよね。

その結果、地域側で一生懸命準備したものが顧客に全く伝わらず、いつの間にか忘れ去られて、「墓標」化するという結果が全国的に見られます。

手間暇掛けて地域側で準備したコンテンツをどのようにして顧客に伝えて、届けていくのかという、マーケティングの基本を自治体と協議・教示して良く必要がありそうです。

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション