マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

【緊急提言】知床遊覧船事故に見る地域観光の危機

4月23日に発生した知床遊覧船の事故から2日が経ち、行方不明者が見つかったものの意識不明、そのまま死亡が確認されるという経過を辿っています。

昨年11月下旬に知床を訪問し、知床遊覧船に乗ろうとしたものの、荒天による欠航で乗船を見送った身でもあるので、他人事には思えず、推移を見守っていましたが、残念な結果になっています。

この間、運航会社の経営状況や従業員の勤務体制、地域周辺からの評判など、様々な情報が飛び交い、運航会社の姿勢や船長の判断を責める声が多く見受けられます。

もちろん、運航会社の姿勢や船長の判断の甘さは非難されても已む無しと考えますが、大事なことは、これは知床という観光地の一事業者の過失や失敗と限定的に解釈するのではなく、日本全国各地の観光地及び施設で生じる可能性がある事故であると肝に銘じ、受入体制の再点検を行う必要があることです。

長引くコロナ禍で生じていた地域観光産業の脆弱化と観光客の受入体制の不備・不全によるリスクについて、2022年2月16日付け投稿記事で指摘したところですが、その指摘が予言として的中したのが、今回の事故となります。

「カッサンドラの予言」のようで、個人的には複雑な気持ちもありますが、公共交通機関をはじめ、地域観光の関連施設・事業者などは、政府の移動制限政策(緊急事態宣言やまん延防止等重点措置)により、大きく増減する需要の波の変化に対応しきれず、最底辺の需要に応じた生産体制(受入体制)しか確保できない状況となっています。

そんな状況下で、急増した需要に対応するため、また、長きにわたるコロナ禍での資金繰りのために、利益最大化の行動に走れば、どうしても安全軽視の、歪な営業活動に走らざるを得なくなるのは、火を見るよりも明らか。

一人ひとりの経営者のモラルが重要であるという指摘は真ですが、モラルだけに頼っても、経営危機に瀕した企業経営者が極端な行動を走るのを制限することもできない現実もまた真なりです。

短期的には、G.W.の需要拡大期に対応した観光客受入体制(安全点検を含む)に迅速に取り組むべきであり、これについては、コロナ禍で「思考停止」状態に陥っていた各地域の自治体観光部署や観光協会が自らの責務を果たすべき時です。

また、中長期的には、コロナ禍で疲弊した地域観光産業の現状や課題を再検証し、地域課農産業の復興に向けたロードマップを作成して、対策を講じるべきです。

コロナ禍での外出制限やリモートワークにより、自治体や観光協会関係者が、自らの地域の事業者とのコミュニケーションが薄くなり、現実問題を見落としていたり、見逃していたりするケースが多いようなので、改めて、意見交換の機会を設けるなど課題認識から始める取組を進めるべきと考えます。

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マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション