地域観光産業の脆弱化と並んで同時進行に、かつ、静かに進行している危機として、地域公共交通機関の経営危機があります。
運転手が足りない 鹿児島市から移譲の南国バス3路線23本、5月9日から9月まで運休 朝の通勤・通学時間帯は維持(南日本新聞)#Yahooニュース
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コロナ禍が地方の公共交通機関問題を浮き彫りにした。
もうコロナ禍前には戻らない、戻れないだろうな。#地域創生はライフワーク— マキアヴェッリ先生 (@EPYON_FELIX) April 22, 2022
人流を抑制・制限した政策を繰り返したわけですから、当然といえば当然の帰結ですが、地域観光産業と同様に、地域公共交通機関の問題も顕在化してきているわけです。
そして、どちらかと言えば、問題が複雑かつ深刻なのは地域公共交通機関の経営危機です。
地域観光産業については、自由競争市場にあるため、脆弱化しても、需要が戻りさえすれば地域外資本の新規参入も期待できるし、時間をかければ回復の目処は立ちやすいです。
これに対して、地域公共交通機関については、大規模な初期投資が必要であり、かつ、市場調整機能の働かない分野であるため、需要の減少→コスト削減の必要性→生産体制の見直し→利用者利便の低下→更なる需要の減少という負のスパイラルに陥りがちで、そうならないようにするには補助金による需要不足の補填という対応を余儀なくされます。
しかし、もともと地域住民を中心とした需要を前提に経営を組み立てており、ただでさえ赤字運行を行っていたところ、コロナ禍で人流が抑制・制限されれば、その赤字幅の拡大は企業の経営努力を大きく超えるものになるのは想像の範囲内で、かくして、路線廃止や企業倒産が現実化しつつあります。
ひとたび路線廃止や企業倒産されれば、その再開にも大規模資本が必要で、市場調整機能も働かないとなれば、政策的に莫大なコストを負担する覚悟が求められますが、代替手段として自家用車もあるということで、交通弱者は割を食うものの、結局のところ地域全体の課題としても盛り上がりに欠けたまま、更に危機は進展するという構図です。
寡少な地元需要だけでは維持できないがゆえに、交流人口の拡大により、地域外の需要(=観光需要)も取り込むことで、地域公共交通機関の維持に必要な需要を確保しようというのがコロナ禍前の戦略であったはずなのですが、人流抑制・制限政策により、その戦略は既に破綻しています。
にもかかわらず、生命維持装置としての補助金投入だけが続けられており、コロナ後の地域公共交通機関の維持・存続、そのために必要な需要の確保について議論が進んでいるという話は全く伝わってきません。
地域公共交通機関の維持・存続問題は、遅かれ早かれ地域の重要課題になりつつあったところですが、コロナ禍により、その顕在化が加速し、今や待ったなしの喫緊の課題となったというのが私の認識です。
コロナ禍での収益大幅悪化に加えて、原油高による大幅コスト増と、ひとつの打撃でも危ういところに更なる打撃を加えられているのが公共交通機関の現状です。
対症療法的対応を取るだけでなく、公共交通機関としての維持・存続の必要性や代替手段の確保に向けた地域住民の合意形成を少しずつでも進めておかないと、更なる追撃があった場合には全く立ちゆかなくなる状況だという認識をもって、自治体は協議・検討を進めるべき考えます、