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先週、ハマスの突然のテロ行為により紛争レベルが一気に引き上がったイスラエル・パレスチナ問題ですが、イスラエルの徹底した(過剰な)報復活動により、中立的な姿勢を見せていたアラブ諸国も、反イスラエルに切替え始め、「中東の火薬庫」に火が付きそうな勢いです。
なぜこのタイミングでハマスが動いたのかについては、その裏にイランやロシアの存在を指摘する報道もありますが、「ウクライナの反攻を認めるのであれば、ハマスの抵抗を非難するのはおかしい」とロシアのプーチン大統領が勢いよく語る報道を目の当たりにすると、今回の紛争がロシアにとって都合が良いということは明らかです。
米国にとってイスラエルの重要度は言わずもなだし、ヨーロッパにとっても石油の供給源である中東が不安定化することはエネルギー調達の面で不安要素を抱えることになるので、欧米の目がウクライナから中東に移ることは必至です。
これによって、もともとウクライナ支援に消極的であった米国上院議会も、ウクライナ支援よりもイスラエル支援を重視する方向に切り替える可能性もあり、ウクライナにとっての戦費調達が難しくなる可能性があります。
世界最強の米国軍といえども、二正面作戦を闘えるほど潤沢な軍事予算があるわけではなく、常に議会による予算管理(シビリアン・コントロール)が徹底しているため、軍事活動が政治により制約されるという側面があることは認識しておいた方が良いですね。
コロナ禍が落ち着き、ようやく通常に戻りつつあった経済活動も、今回の紛争による原油価格の高騰や消費者心理の悪化による景気後退の可能性もあり、単に国際政治問題として見るのではなく、マクロ経済への影響を注視する必要があります。
しばらくはマクロ経済の動向のみならず、国際紛争の動向も加味した分析が必要になりそうです。