PMP資格試験の学習を通じて感じていること
私は、現在、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)の資格取得に向けた学習を進めていますが、「プロジェクトマネジメントは実務を通じて修得すべきで、テキスト学習では身に付かない」という話もよく聞きます。
実際に、プロジェクトマネジメントの手法が頻繁に用いられるソフトウェア開発や新薬開発などの現場では、プロジェクトマネジメントの資格保有者はほとんどいないという現実もあります。
そこで、PMP資格取得の必要性について整理してみました。
PMP資格の要件
PMP資格試験を受験するためには、ハードルとなる2つの要件があります。
ひとつは「35時間の公式なプロジェクトマネジメント研修の受講」です。
米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)により認定された登録教育機関や大学等で定められたカリキュラムをこなすことで得られる単位(35PDU)が求められることになります。
もうひとつは、プロジェクトマネジメントを指揮・監督する立場での実務経験です。
最終学歴が、高校卒業か、それとも大学卒業かによって、実務経験の年数等が異なりますが、大学卒業の場合は、36ヶ月間のプロジェクトマネジメント経験を含む、プロジェクト業務を指揮・監督する立場での4500時間の実務経験が必要です。
プロジェクト業務を指揮・監督する立場での実務経験についても、概ね3年(36ヶ月)程度が考えればよろしいかと思います。
受験資格の詳細については、PMIのホームページで確認してください。(→PMP試験の受験資格)
受験資格要件の難易度
受験に求められる2要件のうち、35PDUの単位取得についてはハードルは低いです。
ひと昔前であれば、大学や専門学校への通学が必要で、相応のコストがかかるため、ハードルは高かったと思います。
しかし、大容量通信網が発達した現代では、インターネットによる通信教育を提供する登録教育機関も多いため、提供する講座内容や価格を吟味しながら、相性の合う講師による講座を選択すべきです。
癖のある講師だと、内容がなかなか頭に入ってこないので、デモ講義などを十分に確認の上、講座を選択してください。講座終了に当たって修了試験を設けている講座や、動画視聴だけの講座など、講座ごとの難易度もそれぞれあるので、料金だけでなく、講座修了要件の確認も必須です。
難易度が高いのは、実務条件の方かもしれません。
「3年間」あるいは「4500時間」と厳密な計算をしている人も少ないと思いますので、それを証明してくれる人(多くの場合では職場の上司かもしれませんが)と良好な関係を築いておくことが大事です。
ステークホルダー・マネジメントもプロジェクトマネジャーにとって重要なスキルのひとつとみなされているので、その能力が問われているとも言えます。
PMP資格受験を試みる場合は、職場の上司をはじめとした関係者の理解・協力を得るようにしましょう。
PMP試験の学習を通じて学べること
PMP試験には、PMBOK(Project Management Body of Knowledge。「ピンボック」と発音)と呼ばれるプロジェクトマネジメントに関する知識やツールを体系的にまとめたガイドブックがあって、それを読み込むことが重要と言われています。
電話帳みたいに分厚いガイドブックが標準テキストとなっており、慣れない日本人にとっては面食らうとは思いますが、マーケティングの著名教科書である『コトラーのマーケティング・マネジメント』や米国公認会計士(USCPA)のWiley問題集なども、同様の大きさと分厚さなので、これが米国スタイルと割り切るしかありません。
ただし、同ガイドブックの日本語訳レベルは怪しいし、実際の試験においても、日本語翻訳のヘルプ機能が使用できるとはいえ、その精度が低く、限られた時間で問題を処理していくためには、プロジェクトマネジメント用語を英語で理解しておくことが重要なので、英語版テキストを購入することをお薦めします。
PMBOKの内容を整理すると、まずはプロジェクトの定義やプロジェクトマネジャーの役割などの総論に始まり、PMBOK全体を理解するために必要な概念が紹介されます。
そして、各論に入っていくと、プロジェクトを立ち上げ、計画し、そして、実行、監視(点検)するという過程を経て終結へと至るまでの間に、必要とされる49のプロセスが詳細に説明されます。
それぞれのプロセスでは、前段階までのプロセスから得られた情報やリソース(インプット)を、いくつかの手法やツールを使いこなすことによって、当該プロセスで生成されるべき成果物(アウトプット)を創出する過程が詳述されます。
プロジェクトマネジメントが、大企業の製品開発やソフトウェア開発などから発展してきた歴史的経緯もあり、その言葉の響きには「機械的」な印象を受ける人も少なくないかもしれません(私もその一人でした)。
しかし、PMBOKに書かれていることは、一度なりともプロジェクトを経験したことある人からすれば、特別なことではなく、極めて「常識」的なことがほとんどです。
ただ、様々な手法やツールが紹介されているので、組織内で慣習的に行われてきたアプローチ以外にも、有効性の高い他の手法やツールが存在しており、それを知ることにより、より円滑なマネジメントに繋がる可能性があります。
その意味では、必要な解答に直結させるためのスキル開発というよりは、合理的な結論に達するために必要なアプローチの幅を増やすためのスキル開発という側面が強いです。
恐らくこういう部分が、PMPの知識は、必ずしもプロジェクトマネジメントに必要不可欠なものではないという意見となり、冒頭に書いたようなPMP資格不要論の論拠となっているように思われます。
「正しいコーチに付かなくてもゴルフはできるが、正しいコーチに付いて、基礎理論を理解しながらトレーニングするほうが、ゴルフが上達する可能性は高い」という理屈と似ており、私としてはまずは抽象度の高い概念である「プロジェクトマネジメント」を標準的に理解した上で、自己流のマネジメント手法を確立していくべきではないかと考えます。
PMP資格取得のメリット・デメリット
プロジェクトマネジメントのスキルを客観的に評価している資格で、国際的にも通用する資格は、このPMP資格だけですので、対外的には「プロジェクトマネジメントの知識はある」ということは証明できます。
では、それで昇進や転職に有利になるかといえば、やはり最優先で評価されるのは「実績」だと思いますので、PMP資格はお守りがわりに思っておくべきかと。
先述したように、スキルの幅を広げるには役立ちそうな資格なのですが、受験に必要なコストや、資格取得後の継続学習に要するコストなどを考慮すると、費用対効果を厳しく精査してみることも重要かもしれません。
個人的には、PMP資格試験を通じて、獲得した知識やノウハウによって、難易度の高いプロジェクトを成功裏に導くことで、組織内におけるユニーク・ポジションを保てているので、費用対効果は高かったと判断しています。
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