マキアヴェッリ先生の研究室
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02 Book Review(書評)

山田敏弘[2013]『ハリウッド検視ファイル』

先日、「ハリウッド史に残る「美人女優惨殺」を検死した日本人法医学者の告白」という記事を読んで、私が好きな米国の科学捜査ドラマ『CSI』のモデルにもなった日本人法医学者がいることを知りました。

本書は、その法医学者Dr.トーマス野口が関わった大きな事件についてのインタビューを踏まえた内容が盛り込まれているほか、彼が異国の地で法医学者としてトップの地位を確立するに至ったキャリアが描かれています。

米国犯罪史に残るような大事件(マリリン・モンローの怪死やロバート・ケネディ上院議員銃撃事件など)に纏わる様々なエピソードも興味深かったのですが、私自身が深く感銘を受けたのは「第3章 サムライ、海を渡る」のパート。

戦時中も、戦火の中で寸暇を惜しむことなく勉学に勤しみ、戦後は、かつての敵国である米国に単身渡航し、現地でインターン医師として勤務しながら、法医学者への道をハードワークで乗り越えようとする姿勢にチャレンジャーとしてのDr.トーマス野口の強さを見る思いでした。

艱難辛苦の連続ではあるのですが、Dr.トーマス野口の視線は、常に米国における自らの地位確立という部分に焦点が当たっていました。

 野口はメディカル・イグザミナー制度が導入された地域で、さらに劣悪とも言っていい職場環境の検視局を探していた。ロサンゼルス地区検視局が、まさにその条件にマッチしていたのだ。ロサンゼルス地区検視局で仕事の手伝いをしたことのある医師や、いろんな噂も含めて情報を集めてきた。初めてカーフィーに会う前に、すでに検視局の内部事情も十分にリサーチ済みだった。

なぜそんな環境で働こうとしたのか。野口はこの段階ですでに、はっきりと検視局のトップ、すなわち検視局長に上り詰めるという目標を定めていたからだ。出来る限りの無名の局で、自分の検視局を作り上げたいと考えていたのである。

そして、7月10日、野口はロサンゼルス地区検視局に正式に入局した。

敗戦の焼け野原から飛び込んだアメリカに「学ぶ」のではない。日本人として「勝負」したいー舞台は整いつつあった。

私自身の口癖で、よく使うフレーズなのですが「勉強します」は一見謙譲の美徳のように感じられますが、実力が勝負の世界では、「甘え」を感じさせる言葉でもあります。

結果を出すことが全ての世界で自分のポジションを築くためには、「勝負する」という気持ちをもって、目標を見据えた努力の積み重ねが重要であることを認識させられました。

最近、ノーベル化学賞の分野で日本人科学者が多く受賞しており、彼らにも、Dr.トーマス野口と同じ雰囲気を感じますが、やはり他の国や科学者に学ぼうということではなく、自らの研究の内容や方法論で勝負するという気構え・心意気を貫くことが重要であると考えます。

 

レビュー評価:

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マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション