「マーケティングとはどのような学問なのか」「マーケティングでは何を学ぶのか」という、初めてマーケティングにアプローチしようとする方にとって、入門書的な位置づけでお勧めしたいのが本書。
「MBAマーケティングの基本から応用までを学べる。」というのはやや誇大広告の観がありあすが、マーケティングの基本的枠組みから、マーケティングの発展史に基づいたフレームワークの変遷など、全体を概観するのに最適な本です。
マーケティングを理解したければ、コトラーが執筆したテキストを1冊読めば十分なのですが、小さな字で800ページ前後にも及ぶ大著を読み込もうとすると、えてして細部にばかり目がいってしまい、「木を見て森を見ず」ということに陥る可能性もあります。
そのため、まずは本書で森全体の地図を眺め、進路を明確にした上で、ワンランク上のテキストを当たっていくことをお勧めします。
なお、注意すべきは、本書は、製品価格を下げて市場の拡大と市場シェアの最大化を狙う製品中心主義の「マーケティング1.0」と、S(セグメンテーション)・T(ターゲティング)・P(ポジショニング)や4P(マーケティング・ミックス)による顧客主体のマーケティングである「マーケティング2.0」を、主な取扱い範囲としています。
したがって、SNSなどの情報技術の発展にともなって、顧客の感性まで踏み込んで、認知行動科学や脳科学の分野との融合を目指す「マーケティング3.0」については、ほんの触りでしか扱っていません。
マーケティング3.0については、その提唱者であるコトラーによる著書もありますので、そちらの紹介の際に、詳細について書きたいと思います。
本書自体は、「講義」というタイトルどおり、口語調の文章で重要ポイントをわかりやすく解説しているため、2−3時間もあれば、ひと通り読むことはできます。
グロービスのMBAシリーズは、エッセンスだけを上手に抽出していますので、興味のある方は、是非、経営戦略やファイナンス等についても読んでみてください。
レビュー評価:
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