マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

「鹿児島県知事選挙2020」を通じて見えてきたもの③

この選挙期間を通じて、私は学生や若者に対して、「世の中に数多転がっている『美味しそうな話』に対して合理的的考え方で適否を判断して」ということを啓蒙してきました。

なぜこのことを強調しているかと言えば、4年前に書いたブログで、バラ色の将来を描いた現職のマニフェストの実現可能性が胡散臭いもので、恐らく、大部分の約束事は守られないであろうことを予測して、次のように総括していたからです。

まずは、こちらのブログで書いてきたとおり、マニフェストを実現するための財源、時期及び実施方法が明確ではないため、どのように政策を実現していくのか、その仔細に関して、県民だけでなく、議会からも追及されることとなります。
また、原発問題についても、自宅の電灯のように簡単に付けたり、消したりできるような代物ではなく、それによって、大きく影響を受ける地域経済や事業者が存在するわけで、その部分への配慮や措置を十分に検討する必要があります。
おそらく、これから先、日本だけでなく、世界も含めて見通しが困難な時代を迎えます。
そして、大きな変化を余儀なくされる流れが押し寄せてくると思います。
その時に、鹿児島県という地域・社会が押し流されないようにするために的確な判断を下し、強いリーダーシップで政策を遂行できるかが、新しい知事に問われる真価だと思います。
今回の県民の選択が不幸な結末とならないよう、新しい知事の手腕に期待します。

2016年7月10日「前途多難」より

 

今回の選挙では、現職を積極的に応援した人々が、自らの不明を恥じて、現職以外のそれぞれの支持者を応援しています。

何も反省しないよりは幾分マシだとは思うのですが、それでも、今回の選挙においても「雰囲気」や「風」といった根拠のないもので重大な選択を促すという、同じ過ちを繰り返している人々がいます。

現在の鹿児島は同じ轍を踏んで、「失われた4年間」とか呑気に言っている状況ではないわけで、選任される知事が、ポンコツか、ポンコツじゃないかで我々の生活に大きな影響が及ぶことを、我々の身をもって経験したのが、この4年間ではなかったでしょうか。

そうなってくると、伊藤候補と塩田候補の2名に絞られてきた中では、私としては、「確実性」「即時性」という2つの観点から、伊藤候補に軍配を挙げざるを得ないわけです。

これが平時であれば、若い塩田候補に対して、知事部局の関係部門からそれぞれ県政の現状や課題に関するレクチャーを実施して、塩田候補者自身が、県内各地を回って、県政の現場や視察をしながら、各地域の首長や住民とも意見交換を行い、新たな県政を築いていくこともできたでしょう。

しかし、現在は危機の渦中にあるという状況です。

知事になったら、その日からコロナ対策や自然災害に対して、県庁内の総司令官として各部門からの情報を収集・分析して、指示を出し、関係市町村や関係機関とも連携しながら、迅速に事態に対応していくことが求められているわけです。

どんなに優秀であっても、どんなにスーパーマンであっても、ゼロからこの複雑な危機管理に対処することは不可能だと思います。

「行政経験」と一口に言いますが、経済産業省と鹿児島県庁では同じ行政組織であっても、それを支える法律も異なれば、制度や組織文化も異なり、やがては慣れることもあるでしょうが、即時にというのは無理です。

未曾有の危機にあって、不確実な可能性に賭けるのか、それとも、実績に裏打ちされた経験と知恵に期待するのか、という分岐点に立っていると言えます。

そこで、ふと思い出したのが、名将ハンニバルの天才的戦術により、国家の危機に瀕していた都市国家ローマのエピソード。

老練な手腕で持久戦に持ち込み、徐々にハンニバル軍の勢力を削いでいた将軍ファビウスでしたが、積極的攻撃でハンニバル軍を追討するという威勢の良いことを言い出した将軍ヴァッロを、民衆は戦局を変えてくれると期待し、ファビウスを司令官から解職し、ヴァッロをハンニバルの前に差し出します。

しかし、その結果は、カンナエの戦いにおいて、ローマ軍は逆に壊滅的打撃を受けることとなり、自らの不明を悟ったローマの民衆は、再び、ファビウスを将軍に任命し、以後はその持久戦を支持し続け、反転攻勢のきっかけを作り出し、長きにわたるハンニバル戦争に勝利することができました。

都市国家ローマが、ローマ帝国として長きにわたり繁栄を築くことができたのは、危機時のリーダー選択を間違えなかったことにあると思います。

未だに「雰囲気」や「風」で選ぼうとしている県民が少なくない(学習してない)ことも改めて感じているところです。

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マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション