マキアヴェッリ先生言行録
Openness, Fairness, and Transparency
07 アウトサイダーの視点

行政組織とCRM(カスタマー・リレーション・マネジメント)

2019年12月に転職し、転職先の会社で重点プロジェクトで掲げられていたのがCRM。

3文字アルファベットのレターコードが飛び交う企業文化もあり、当初はそれに慣れるのに必死であったことを思い出します。

そんな中で、真っ先に覚えた言葉がCRMで、Custmer Relation Management(顧客関係管理)の略語であることはすぐに理解できたものの、そのことが意味する内容や意義といった概念はなかなか理解できませんでした。

そんな時に、ちょうど定期購読していた『Harvard Business Review』で「顧客体験は深化する」という特集が組まれたこともあり、最新のCRM事情に関する論文を読んで、よううやく体系的に理解することができました。

「消費者のニーズが多様化する中で、自社製品を中心にして顧客に広告宣伝をはじめとしたセールス活動による利益最大化を図るのではなく、志向やニーズ、取引実績に接点履歴などの個々の顧客のデータベースを活用して、一過性の取引関係ではなく、中長期的な取引による価値最大化(=LTV Life Time Value)を目指す」というのがCRMの中身になります(私なりの解釈)。

さて、「そんなCRMを行政でも導入か」ということで気になったのが、こちらの記事。

CRMの肝は顧客データベースの構築と充実なのですが、「実証実験」という名目の下に、新規顧客として桜島や錦江湾を訪れる観光客のスマートフォンにアプリをダウンロードしてもらい、年齢や居住地などの属性情報を取得するという取組から開始するようですが、アプリをダウンロードしてもらって、購買情報の入力をするという、顧客にとって一手間も二手間もかける不親切な施策設計になっているのが気になります。

また、新規顧客をロイヤルティの高い顧客に育成するためには、顧客との様々な接点においてコミュニケーションを行う必要がありますが、記事ではその点に関する言及ががなく「旅行後もイベントや割引などの情報を発信する」と記述があるだけで、モニター3000人がモニターツアー中だけ使用して、その後は全く使わなくなり、スマホからアプリを削除という、「屑アプリ」化する可能性もあります。

顧客管理のためのアプリやシステムはあくまでツールであり、大事なことは顧客中心のマーケティング活動を行うための組織体制や施策体系となっているかということがCRMを推進する上で重要なのですが、SNSを単なる情報掲示板として活用するなど、行政組織は新しいツールやテクノロジーを勘違いして使用する傾向にあるので、CRMの概念や哲学をしっかり学んでアプリを運用してほしいです。

 

DHBR2020年1月号の特集では、レビット「顧客との絆をマネジメントするする」という古典的論文が掲載されていますが、「顧客の視点」や「顧客満足」という概念で製品購入後の顧客と企業の間のリレーションが成功秘訣であることを説明しています(初出は1983年!)。

また、「USJは顧客体験をデータドリブンで進化させる」という論文の中で提示された、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンによるテクノロジーを用いたオフラインとオンラインの融合と、それを通じた顧客体験を向上の具体策が興味深かったです。どうせ実証実験をするのであれば、このレベルまで踏み込んで欲しいと思います。

「コネクテッド戦略:顧客と深く、長くつながる」という論文では、CRMの旧究極的なあり方(将来像)が描かれていて興味深かったのですが、このレベルを実現するには革新的なテクノロジーの運用が必要であり、それを組織全体として運用する点に高いハードルを感じました。それでも「夢のある」論文ということで面白かったです。

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マキアヴェッリ先生
Director of Business Strategy Department. #イタリア好き #Apple信者 #経済学修士 #スローシティ伝道師 #空港おじさん #ガンダムおじさん #薩摩藩脱藩浪人