20年振りに円相場が1ドル130円後半まで急落した日本為替。
欧米英の中央銀行が金融引き締めを図る中で、日銀は改めて金融緩和の必要性を示したことが市場にインパクトを与えたようで、急激に円安が進展しました。
元々、アフターコロナの景気回復が期待される中で、原油価格の高騰が進行していましたが、ウクライナ情勢が不透明さを増す中で、食品・エネルギー価格の上昇が顕著になりつつあります。
多くの品目を海外からの輸入に依存している日本では、この影響を大きく受け、インフレ懸念も高まっているため、日銀も金融引き締めを図ると思っていましたが、まさかの判断で、私も見立てを誤りました。
とはいえ、金融引き締めによる海外における長期金利の上昇は、海外への資金流出を促し、遅かれ早かれ、日銀も金利上昇に動かざるを得ない局面が訪れます。
その時に、日銀がこれまで買い増してきた500兆円にも達する日本国債は、利払いが利息を上回こととなり、日銀のバランスシートは大きく毀損されることになります。
長年のデフレから脱却するため、新規需要の創出ではなく、金融政策のみに頼ってきた日本経済・社会は、そのツケを払う時が間もなく近づいていますが、そうなった時に、どれほどのインパクトが生じるのか、時限爆弾が爆発するのを待っているのが我々の置かれている状況と認識すべきです。
日銀の動きを見ていると、市場の自動調整機能という「市場の失敗」を避けようとするあまり、過度に金融政策に依存しすぎて、逆に「政府の失敗」の隘路に嵌まりつつあるように見受けられます。
これは金融政策だけでなく、つい最近までのオミクロン株の感染拡大に対する政府の人流抑制・制限政策も同様です。
2月19日の英国議会では、ボリス・ジョンソン首相が、人口の大半を占めるイングランドにおける新型コロナウイルス関連の規制を全面的に撤廃する発表をしましたが、その時の彼の言葉が、“moving from government restrictions to personal responsibility”(政府規制から自己責任への移行)というもの。
市民が自ら考え、判断することを放棄して、いつまでも思考停止をしていると、気付かない間に、最悪の事態が進行することもあることを肝に銘じて、アフターコロナの経済・社会の有り様に一人ひとりが責任を果たすべき時だと考えます。