昨日は、長崎を訪問し、かつて上海駐在を務めた九州各県事務所のOB/OGの皆様と旧交を温めてきました。
我々が上海駐在として勤務したのが、2010年の上海万博の時期ですから、かれこれ12年近い付き合いになります。
コロナ禍に入ったため、3年ぶりの開催だったのですが、コロナ前に公務員を辞めた2人(私を含む)に加えて、新たに2人が途中退職をして新たなキャリアを始めていました。
当時は皆が各県庁・政令指定都市から派遣された公務員であった割に、私から見ても「型破り」な人材だなと思っていましたが、節目となる年齢を迎えたり、あるいは、コロナ禍で思うことがあったりと、それぞれが転機を迎える中で覚悟を持った決断をしていました。
各人の人生の選択だし、私も官から民へと転身した一人なので、応援する気持ちは当然のこととして、気になったのは「もう『安定した公務員』というイメージだけでは優秀な人材を留め置くことができなくなってるのではないか」ということ。
今、企業経営で主流となっている「パーパス経営」では、企業は社会に提供すべき価値や果たすべき役割を掲げ、その理念に賛同する多様な人材を確保することに躍起になっています。
そして、そこに貢献できる経験やノウハウを有する人材、あるいは、意欲的に働ける人材に対して、相応の報酬やポジションを約束して、成果を出すためのインセンティブを用意しています。
他方で、お役所の方は、年功序列・終身雇用を前提とした人事制度を維持してはいますが、そもそも組織として追求すべきミッションは何なのか、そのために人材を如何に育成あるいは確保していくのか、ということを明確にしないまま「地域に奉仕」というお題目を唱えるに止まっています。
ゼネラリスト養成の名目の下に、一定年数の時間が経過したら定期的に異動させるシステムも不変なのですが、テクノロジーの変化やそれによる社会・環境の変化の速度が加速化しているにもかかわらず、人材の高度化・専門化よりも、依然として均質化・平準化に重きを置いているように見受けられます。
それゆえに、地方公務員制度の硬直化という構造的問題が、高度化・専門化を果たした人材の離職を促している側面も否定できないと思います。
コロナ禍で普及したリモートワークをはじめとした新たなテクノロジーで業務の効率化が可能なはずなのに、聞くところによると、コロナ前のように全員登庁によるオフィスワークの状態に戻りつつあることが地方公務員制度の構造問題の根深さを示唆しているように思います。
本人が志や夢を持ってポジティブな理由で辞めていくのであれば、そこは致し方ない面もありますが、お役所の構造的問題が改善されないが故にネガティブな理由で辞めていくのであれば、それは地域にとって人材の流出に繋がります。
辞めていく人材こそ均質化・標準化されてない強みや可能性を有しているかもしれないので、構造的問題を放置することなく、そこに果敢にメスを入れられる組織こそが有為な人材を引き付けることができるようになるのではないかと考えます。