マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
02 Book Review(書評)

オペレーションではなくプロジェクトが価値を生む

M.E.ポーターが、1980年代を中心に日本経済が成功した要因として「オペレーション効率の最大化」にあると看破したのが『日本の競争戦略』(2000年)という本でした。

他方で、バブル経済崩壊以後の日本経済が鳴かず飛ばずになっているのは、オペレーション効率最大化によるシェア獲得競争という競争戦略以外の戦略を持たないからだということで、日本企業が持つべき戦略を提示した本でもありました。

あれから20年経過して、このオペレーション至上主義というべきものが根強く残っていることを最近は痛感することが多いです。

一度形成された企業文化、あるいは、個々人の仕事のスタイルなどは容易に変化しにくい性質のものであることを改めて実感させられます。

DHBR2022年2月号掲載の「プロジェクトエコノミーの到来」では、もはやオペレーションが価値を産み出すのではなく、プロジェクトが価値を生み出す「プロジェクトエコノミー」に時代に入ったことが書かれています。

20世紀を通して、オペレーション(組織の「運営」に関係する)が膨大な価値を生み出し、効率や生産性の改善という面からも膨大な価値を生み出してきた。しかし21世紀に入ると、インターネットの爆発的な成長や製品ライフサイクルの短縮、人工知能やロボティクスの指数関数的な進歩にもかかわらず、欧米諸国の経済成長は、ほとんどの期間で横這い状態が続いている。その一方で、プロジェクト(組織の「変革」に関係する)が、より頻繁な組織改革、よりスピーディな新製品開発、より迅速な新技術の導入などを通して、短期的な業績と長期的な価値創出の両方を牽引するようになりつつある。

これは世界的な現象である。たとえば、ドイツでは少なくとも2009年以降、プロジェクトがGDPに占める比率が着々と伸びており、2019年には全体の41%を占めるまでになった。その他の国については正確なデータを入手することが難しいが、大半の欧米諸国には同様のパーセンテージが当てはまりそうだ。中国やその他のアジアの主要国など、昔からプロジェクトベースの仕事が重要な成長の源だった国々では、おそらくこの数字はもっと高いだろう。

AIや機械学習が進むことにより、これまでマンパワーで行われていた作業が徐々に置き換わっていく現象が進むことになる一方、AIや機械学習をどの部分に導入して、オペレーションを効率化していくのかという、より総合的かつ複雑な全体設計の仕事に関する重要性が高まっていくのは自明の理かなと。

「正確な事務処理ができます」ということはあまり価値がなくなっていて、課題を認識して、課題の整理ができ、更に、解決策を考え、それを関係者と協議・調整しながら解決していくスキルを持つことの意味や意義はますます大きくなっていると考えます。

惰性で仕事を続けることは、余地がますます小さくなる一方で、リスクはますます大きくなる時代に突入しつつあることを考えさせられた論文でした。

競争戦略論(ポジショニング派)の大家であるポーターが、日本企業の競争戦略について書いた本です。

20年以上前に書かれた本ですが、日本企業(主に大企業)の行動様式を俯瞰してみると、ポーターが指摘した課題があまり克服されてないのではと思うことも。

大企業主体の経済ではなく、大企業や中小企業、スタートアップ企業などが幅広く連携・協業するオープンイノベーションをどのように起こしていくかがKey Factorになると個人的には考えています。

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション