チームのために毎週配信しているメールに掲載したコンテンツの公開版です。
今週の注目キーワードは「ナッジ」。
最近、公共政策の分野でインセンティブに代わって、よく使われるようになった手法です。
ナッジとは「肘で軽くつつく、控え目にうながす」という意味で、リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンが2008年に出版した『実践 行動経済学』で使った言葉です。
従来の経済学は、「合理的経済人」という人間モデルを用意し、人は常に自分の利益を最大化する意思決定を行うという仮説を設定しましたが、それほど人間は合理的な生き物ではないということで、人間らしいといえる非合理さ、言うなれば心理学的なアプローチを加え、人が経済行動においてどのように考えどのように行動するかを理論化したのが行動経済学になります。
我々の仕事に置き換えれば、インセンティブを付与すれば顧客が付いてくるはずだというのが、「合理的経済人」仮説で、それとは反対に、インセンティブを付与されなくたって、自らの価値観や信条に基づいて、行動する人だっているはずだ!という現実を考えるときに役に立つ理論モデルです。
人間にはバイアス、惰性、楽観性、損失回避性、不注意、受け身、周囲に同調、という性質がつきまとうため、常に合理的な判断を下すわけではなく、判断が難しいもの、未経験のもの、すぐにフィードバックが得られないもの(選択の結果が遅れて現れるもの)に関しては、ナッジが役に立つと説いています。
行動経済学は、純粋な経済学という学問領域に止まらず、マーケティングや政策現場でも使われるようになっているので、興味関心のある方は、是非本を手に取ってみてください。