マキアヴェッリ先生言行録
Openness, Fairness, and Transparency
03 BOOK

ベンチャー企業なれど成功の背景には一貫したマネジメント理論

Peach Aviation急成長の理由

ベンチャー企業から日本を代表するLCC(Low Cost Carrier)へと成長を遂げたPeach Aviation。

同航空会社の井上慎一社長が初出版した書籍『ピーチのやりくり』を読みました。

「おもろい」ことを追求する同社だからこそ、何か奇抜な秘策あるいは裏話があるかと期待していましたが、実際には、オーソドックスなマネジメント理論に基づいた、着実な実践の積み重ねが多いことが判明しました。

しかし、その「実践の積み重ね」が、他社が容易に実践できないからこそ、同社の競争優位となっています。

 イノベーションこそが成長の源泉

Peach Aviationという会社は、イノベーションを生命線として成長してきた会社です。

「ピーチがめざすのは『空飛ぶ電車』!」(Section35)と言い切るように、業界の枠にとらわれることなく、新機軸を打ち出すことを常に考えています。

そのために、「全体業務の1割はイノベーションのために!」(Section34)において、「イノベーションは非連続から起きるものだ!」「イノベーションは継続的に行わなければならないものだ」ということを書いています。

イノベーションとは非連続かつ継続的なものなのですが、このキーフレーズは、まさにシュンペーターのイノベーション理論。

イノベーション理論の第一人者である、一橋大学名誉教授の米倉誠一郎先生に教えを乞うたエピソードが本書に書かれていました。

「社内でも、直接、会って話そう」(Section21)「マニュアルは成長させるもの!」(Section24)においても、暗黙知の形式知化という知識経営(Knowledge Management)に不可欠なコミュニケーションの円滑化に向けた仕掛けづくりを進めた事例が紹介されるなど、決して「やんちゃな」航空会社の側面だけではない、合理的な経営が行われている印象を受けます。

 レッドオーシャンにおける世界レベルの競争

LCCといえば、かつては米国のサウスウエスト航空がブルーオーシャン戦略のモデル事例として紹介されていたり、また、JALやANAなどのフルサービスキャリアが未だに国内市場で幅を利かせている現状もあったりで、Peach Aviationも、競合他社なきブルーオーシャンを悠々と泳いでいるのではと勘違いしている人も少なくないと思います。

しかし、営業利益率が10%を超え、国内では「LCCの優等生」となったPeach Aviationであっても、その地位に甘んじることなく、米国のサウスウエスト航空の営業利益率17%、アイルランドのライアンエアーの営業利益率23%をベンチマークとして、更なる高見を目指しています。

そこで満足せず、自分のいまのレベルを「上のレベルの足元」と見ることで、新たな高み、新世界が見えてきます。それまでのレベルでよい成績を収めるよろこびを得られたのですから、より高いレベルではなおさらのはずです。(「志を高く、めざすは世界チャンピオン!」(Section25)

 

Peach Aviationに学ぶ「プロフェッショナル論」

本書は、社長視点で書いていることもあり、優れた経営書としても読むことができる一方で、同社の社員の経験を通じて、「プロフェッショナル」とはどうあるべきか、というプレイヤー視点からの読み方も可能です。

  • 「お客様から1000本ノックを受けて世界一になる」(Section18)
  • 「どんな小さな情報でも、すべて入手しろ!」(Section28)
  • 「結果にこだわるプロ意識をもたせろ!」(Section32)

一見厳しそうに見える会社なのですが、根底にあるのは、やはり「おもろい」という文化。

私や社員たちが「おもろさ」を大切にしているのは、1つはそこから「新しい価値」が生まれると思っているからです。たとえば、多くの製品やサービスでは「早い✕安い」ことが重視されていますが、そこに「おもろい」が加わって「早い✕安い✕おもろい」となれば、それを使ってみたときのよころびや楽しみは格段に増すもの。人には「おもしろがろう」とする遺伝子みたいなものがあって、そこが刺激されると大きな価値を感じるものだと思っています。もう一つは,人びとのおもろさを求める姿勢は、雰囲気となってまわりの人に伝わるからです。「なんか、おもろそうなことをやっているな」と感じれば、人の気持ちはそっちのほうへと向かっていくもの。とくに、私たち航空会社は形のないサービスを中心に商売しているものですから、雰囲気をつくってお客様に感じていただくということはとても大切なのです。(「これやってみたらおもろいんちゃう?」(Section01)

顧客に喜んでもらい、社会に貢献する―。

企業としての基本姿勢を、シンプルに、そして、愚直にやり通すPeach Aviationの真実の姿を垣間見たような気がします。

Peach Aviationという企業は、顧客にサービスを売るだけでなく、企業文化も浸透させることで、LCCを認知させ、社会にイノベーションをもたらした。

薩摩藩英国留学生顕彰碑の前にて

「人生の価値観を変える旅」について井上社長自らが書き連ねているノートがありますので、こちらも是非読んで、”Peach Way”の理解の一助としてください。→tabinoco:「桃屋の店長」ノート

 

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