マキアヴェッリ先生言行録
Openness, Fairness, and Transparency
06 マキアヴェッリ先生のキャリア論

代償なき夢

最近、大学生向けの講義を依頼されることも多く、昨年は3回ほど講義をさせていただきました。

大学生にとっては華やかな世界に見えて、就職希望ランキングでも上位に位置する航空会社の端くれであるため、航空会社に就職を希望する大学生にとっては、コロナ禍で打撃を受けている航空業界の現状や展望を聴ける機会ということで、講義中あるいは講義終了後の熱心な質疑応答を何度か経験しました。

こういう時に積極的にアプローチしてくるのは、堅実に準備や人生設計を進める女子学生がほとんどなのですが、彼女らが不安に思っているのは、客室乗務員(CA)の採用動向で、「夢だから諦めたくない」と言うのです。

就職が一生を決めることはないと私自身は思っているのですが、それでも、最初に社会人として仕事を経験する業界や職種はその後のキャリアに大きな影響を及ぼすと思っているので、私が理解している客観的状況について、事実を伝えます。

  • 今回のコロナ禍で航空各社のバランスシートは大きく毀損し、当面の間(数年間から十数年間)、積極的な投資をする余裕はない
  • IATAによれば、航空需要の本格回復も早くて2024年ということで、ここ数年は限定的な需要の下、過剰な生産体制との間で、需給バランスの調整が必要な状況が続く
  • 最近の報道で見られるように、雇用している客室乗務員(CA)を社外派遣することで、辛うじて雇用維持を図っている状況であり、新たなCA採用の余裕がいつになるかは見通せない

希望を抱いている女子学生にとっては、身も蓋もない、希望を失うような話かもしれませんが、彼女たちが就職活動を始める頃に、航空業界の業績がV字回復をしていることはどうしても考えられないので、私の「見立て」を訥々と話します。

こんな不景気な話をされると、当然、気持ちも萎えるだろうと思うのですが、それでも「やはりCAを目指す」、しかも、「JAL/ANAのCAを」と言い張る女子学生ばかりです。

「あれっ」と私が思うのは、CAになることが夢なのであれば、どこの航空会社であろうと、まずは航空業界に入って、CAという職種を選択することが戦略的に正しいはずなのに、採用計画がないだろうし、あったとしても、狭き門になるのが必至であろうJAL/ANAという日本の二大キャリアに固執するのは何なのだろうと。

結局のところ「華やかなイメージ」「標準以上の給与報酬」「充実した福利厚生」という、社会的評価の高い安定した職業への就職願望に過ぎないのではないかと穿った見方をしてしまいます。

社会人経験が全くない大学生に対しては、過度の厳しさなのかもしれませんが、先述した航空業界の現状と展望などは、日本経済新聞などで業界をフォローしていれば、当然理解しておくべき市場環境です。

狭き門であることを認識できているのであれば、その狭き門を突破するための戦略が必要であり、その戦略とは、何を実行して、何を捨てるべきなのかを明確にした上で、やるべきことを選択し、集中することだと考えます。

何となく漫然としながら、環境や状況が時間の経過につれて、改善していくことを待つだけの消極的姿勢を乗り越えられるほど、航空業界が置かれている状況は楽ではありません。

むしろ、これまで常識とされていたことが常識ではなくなり、過去の延長線上にではなく、全く新たな「価値の追求」と、それに応じたサービスやコミュニケーションが求められる時代に入りつつあります。

そういう時代に入りつつあるからこそ、自分の中の可能性とそこから生まれる様々な選択肢に思いを巡らせてほしいのです。

固定観念と手前勝手な思い込みからは新たな時代に相応しい価値やサービス、コミュニケーションは誕生せず、それを生み出せなければ、航空業界の「冬の時代」はまだまだ続くという厳しい認識は持ってほしいです。

夢を追いかけるならば、それに付随するリスクを飲み込み、更に、そのリスクを克服する覚悟が必要です。

 

 

 

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
Director of Business Strategy Department. #イタリア好き #Apple信者 #経済学修士 #スローシティ伝道師 #空港おじさん #ガンダムおじさん #薩摩藩脱藩浪人