現在、私が担当している領域は、企業全体の構造から見れば、経営理念やビジョン、全体戦略(企業戦略)の下位構造である「事業戦略」に当たります。
私が得意とする「地域創生」はひとつの事業分野であると同時に、他の事業分野にも深く関わる領域でもあるため、部門横断の総合調整機能を果たすべく、事業戦略全般を担当しているという状況でした。
ところが、経営トップの判断により、「地域創生」を会社の経営理念に位置づけるということで、急遽、経営企画の領域にも仕事が拡張され、会社としての方針・方向性を定めることを求められるようになりました。
確かに、競合他社と比較して、「地域創生」という分野では先進的な取組を行っているという競争優位を確保しているので、差別化戦略を図っていく上で、全社的な方針に位置づけるという部分に関して異論はありません。
ただ、経営理念に位置づけるとなると、最近、ビジネス世界の界隈では「CSR」「ESG」「サステナビリティ」という企業の社会的責任に関わる言葉が溢れており、そこに「パーパス」(Purpose)という言葉も加わってきているという状況。
実際に、会社のミーティングに参加してみると、何処ぞのコンサルティング企業がまとめた資料を切り貼りしたような資料で議論が行われており、今後の会社の経営方針に関する議論を自分たちの言葉で語るのではなく、余所から借りてきた生煮えの言葉で整理しようとする姿勢に違和感を感じたため、「私自身が理解した概念で『地域創生』を整理したい」と啖呵を切って、慌てて勉強を開始したという次第です。
そんな風に格好を付けてはみたものの、どうやって論点整理や定義付けをしていこうかと悩んでいたところに、「天は自ら助くる者を助く」という言葉通りに、自分の手元に届いたのが『Harvard Business Review』の10月号。
10月号の特集記事のテーマが「ステークホルダー資本主義:パーパス主導の経営で新たな未来をつくる」です。
株主利益最大化の経営からの揺り戻しなのか、もう少し慎重な見極めが必要なんでしょうが、すべてのステークホルダー(従業員、顧客、仕入先、地元コミュ二ティ)に貢献するため、崇高な目的(ノーブル・パーパス)と人を戦略の核に据えることを重要視しています。
ノーブル・パーパスを掲げるだけでなく、持続的に情熱をもってコミットメントできるかどうかであったり、十分な投資リターンを得ることができるかどうかであったりも吟味する必要があるとは思いますが、基本的な考え方としては納得がいくものでした。
『Harvard Business Review』の素晴らしいところ(ゆえに定期購読しているわけですが)は、単に一過性の話題を表面的に追っかけるのではなく、過去の類似の概念や理論との違いであったり、新しいトレンドの先見性や可能性であったりを深堀りしているので、自らのビジネスに置き換えた場合の有益なインサイトを得られるということです。
「新しいもの」好きの経営層の指示にあたふたすることなく、自分なりの見立てや見通しをもって物事を整理していくことが、仕事の納得感や充実感につながると思うので、ビジネスの基礎体力向上のために『Harvard Business Review』は引き続き購読していきます。