マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

2023-Apr-8 Weekly Report

日本経済新聞デジタル版の本誌だけでなく、北は北海道から南は九州・沖縄までの記事が掲載されている地域経済面もサーベイするのが日課です。

そのサーベイ結果のうち、地域創生という観点から毎週定期的にレポーティングしています。

今週の注目記事はこちら👇

  1. 養殖サーモン、国産に光 故郷の川の魚危機 資源問題の扉開く
  2. 気温上昇1.5度超え目前 脱炭素、難路の国際協調
  3. エンブラエル、中印で攻勢
  4. 脱・キャッシュレス後進県 九州、地銀が旗振り役
  5. 5期ぶり黒字化見込む 仙台空港が今期計画公表

①の記事ですが、海洋資源の管理が強化される中で、調達・供給を安定化するためには、養殖は避けて通れない道です。

私も、漁業経済学の観点からブリ養殖について研究をしていた時期があるのですが、その時に知ったのは、陸上で可視化できる農業と異なり、海面下で行われる漁業では生態観察も一筋縄ではいかず、農業と比べるとリスクが高いということ。

今回のサーモン養殖ではろ過システムで水を浄化しながら使う閉鎖循環式による陸上養殖を行うとのことで、生態観察による管理が容易になるだけでなく、水道水から作った人工海水を併用するため、1日あたりの水を交換する割合が低く済み、自然への負荷が少なくなります。

新しい技術や方式の開発による陸上養殖の普及・拡大が期待されます。

②の記事ですが、気温上昇の「1.5度」というのが重大な節目になりますが、この1.5度というのは何を意味するのか。

IPCCの報告者が提言している「1.5℃」は、「point of no return(ポイント・オブ・ノー・リターン:後戻りできない分岐点)」と呼ばれ、1.5℃を超えると、温暖化対策を行っても気温上昇が2℃を超えることが避けられないと考えられおり、極地方の氷の融解、アマゾンの熱帯雨林の喪失など気候変動に歯止めがかからず、社会への深刻な影響が懸念されます。

脱炭素に向けた新エネルギーの開発や各種規制など国際的な動きが加速しそうです。

③の記事ですが、定員約70−90名の中型航空機(リージョナルジェット)分野で世界最大のシェアを誇るのがエンブラエル社です。

ブラジル企業というのが面白いのですが、世界を見渡してみれば、このようなユニークな企業もあります。

日本国内ではフジドリームエアラインズが使用している機材として知られていますが、いわゆる「大型バス2台分の定員」と言われるキャパシティを活かして、ANAやJALなどのFSCが使用する大型機材では需要不足で就航できない2地点間を結んで、チャーター便や定期路線開設などユニークな戦略を展開しています。

LCCで標準的な180人乗りの機材を満員にできるほどの航空需要がない地域でも、半分の90名くらいであれば航空需要を見込めるということであれば、エンブラエルによる就航可能性はあります。

ただし、乗客数が半減するということは、その分の固定費削減率が大きく見込めないことになるため、観光需要以外のビジネス需要や帰省需要も一定程度ないと路線就航は難しいかもしれません。

④の記事ですが、「キャッシュレス後進県」と書かれてしまった鹿児島。

キャッシュレス分野だけでなく、行政や教育でもデジタル化についても、それほど進んでないことが各種データで示されています。

デジタル化が進んでなければ、その先にあるX(=Transformation)はまだ遙か先ということで、地域経済の競争力という面では心配になります。

デジタル化が進まないということは、定量データが不十分で、それらを活用した分析もできないということで、勘と偶然性に左右される政策や施策が続くというわけです。

⑤の記事ですが、コロナ禍で大打撃を受けた空港経営も、航空需要の回復とともに、財務の健全化や積極的な投資の動きが見られています。

仙台国際空港も、2024年3月期の単独最終損益を1億5500万円の黒字(23年3月期は1億1500万円の赤字見込み)とする計画を発表したところです。

同空港では、台湾のスターラックス航空が、日本で6都市目の路線として新規就航したこともあり、計画達成に向けた順調な滑り出しです。

現在、国際線の再開競争で地域間の優勝劣敗が顕著になっていますが、「先んずれば人を制す」という言葉どおりに、リスクを獲って、積極的に動いていた空港には着実に国際線の再開や新規就航が相次いでいます(新潟空港、高松空港など)。

コロナぼけ」で、情報収集や企画立案を怠っていた地域は、航空会社の機材数や空港ハンドリングの従業員数などの制約条件下で、リソースの確保競争の面で完全に劣後しています。

昨年の今頃は、そろそろコロナ対策が緩和されて、国際線再開の期待が高まっていた時期で、一部の自治体や空港会社が積極的なエアライン誘致策を仕掛けていたので、地域間・空港間競争に備えるべしというのを、某自治体には提言していたところですが、その提言は効果空しく、具体的な施策に反映されることがなかったようです。

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マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション