マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
01 Regional Revitalization(地域創生)

2023Jul.3 Weekly Report:地域経済サーベイ

チームのために毎週配信しているメールに掲載したコンテンツの公開版です。

■​​ふるさと納税、その場で返礼品 ビジネス特許を取得

ギフティの「旅先納税」と似たようなコンセプトですが、訪れた土地の店舗や施設で自治体に寄付をして、その場ですぐに「ふるさと納税」の返礼品(ゴルフ場利用券、宿泊券及び食事券など)がもらえるサービスとのこと。

6月1日時点で茨城県つくばみらい市など10府県20自治体が導入ということで、どこまで提携自治体を広げられるかが課題ですね。

このように、ふるさと納税については様々なサービスが始まる一方で、プロモーションを中心として過熱気味であることから、総務省で新たな規制も始まりそうな感じです(情報ソース)。

税収の流出額が大きい自治体からは制度に対する反対意見も出始めているところですが、既に相当規模のマーケットができあがっていることや「負け組」自治体がある一方で、「勝ち組」自治体も相当数あることを鑑みると、制度の見直しはあっても、廃止は難しいのかなと。

過当競争に陥らない範囲で、ルールや運用の見直しで、制度自体は続くものと考えています。

 

KDDI、訪日客30万人の人流分析

こちらの記事で注目したいのは人流データの価格。

ナビタイムが保有する30万人の訪日外国人の位置情報を使ったデータを年間480万円という価格設定で提供する予定で、国内の携帯電話を使ったKDDIによる人流分析とセットの場合は年間700万円という価格設定とのこと。

自治体の観光戦略立案などでの利用を想定しているようですが、30万人の顧客データはデータ規模として不十分だし、500万円近いデータ価格は、B2G向けサービスとしては高すぎる印象です。

人流データは現状把握をするのには便利なツールなのですが、それを可視化した後に、どのようなインサイトを得て、課題分析や対応施策につなげるのか、という部分のソリューションが不可欠です。

自治体が欲しているのは人流データそのものではなく、人流データから見えてくる課題であったり、それに解決するための方策だったりするわけで。

これらのソリューションを用意できない限りは、単にデータだけで500万円という価格は、自治体からは簡単に手が出ない価格設定だと思います。

 

被災地、昆虫で観光振興 福島・田村市、周辺と連携続々

昆虫で観光振興とはややマニアックと思いつつも、様々な観光資源を活用して地域振興を図る動きの中では、「有り得るかも」と思った取組です。

2022年にクワガタサミットを開催し、2023年には市役所内に「昆虫課」を設置するなど、かなり本気の動きを見せている福島県田村市ですが、カブトムシやクワガタムシなどの昆虫は男の子にとっては、やはり浪漫なんですよね。

都内の東急ハンズでも、夏休みが近づけば、昆虫採集グッズが販売されるように、昆虫採集をきっかけとして家族連れを呼び込むこともできるのかなと。

折しもアウトドアブームでキャンプ人気も高まっているので、親はキャンプや登山で楽しみ、子供たちは昆虫採集で楽しむという家族旅行も有り得るかもしれないと思った記事でした。

 

訪日客観光「夜も・広域に」 関西の官民、誘客へテコ入れ

資源高のためにパビリオン建設の入札が思うように進捗してない大阪万博ですが、ハードの整備が思うように進まない一方で、その波及効果に対しては反比例するかのように期待が高まっています。

その動きのひとつとして、大阪万博に訪れた外国人観光客を我が地域に誘客しようという動きがあり、大阪府内ではナイトクルーズやナイトショーなどの「ナイトエコノミー」の受入体制整備が進み、広域でも、近畿圏内での周遊はもとより、中国・四国地方へも足を運んでもらおうという連携の動きが見られます。

オリンピックや万博などの国家的イベントに絡めたプロモーションは、自治体にとっても議会や住民に説明しやすい要素であることから、来年度予算では「大阪万博を契機とした〇〇プロモーション事業」なるものが林立することが予想されます。

大阪万博に絡めたインバウンド誘客を促進する上で、我々としてどんな価値を提供できるのかを今からでもしっかり考えて行きましょう。

 

伊藤忠テクノソリューションズ、医療ビッグデータ参入

パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)と呼ばれる、健診や処方薬、睡眠、運動など個人健康に関する情報を統合・解析し、個人にあったヘルスケアサービスの提供につなげる事業に参入するという記事です。

私自身も、現在、この分野に関わっているので、正直な感想としては、後発企業である伊藤忠テクノソリューションズが、どこに勝ち筋を見出して参入してきたのかと疑問に思うところです。

PHRについては、データが各所・各機関に散在していて、それらを統合していく必要があり、そのためには他者との連携・協業が不可欠です。

この連携・協業の枠組みが、先行企業どうしの間でできあがっているため、後発企業では当該企業自体にユニークなデータが存在しているか、あるいは、データの統合や分析に関する画期的なシステムが存在しているかのどちらかでの優位性なり希少性が必要かと。

こういうシステムは乱立すると、それぞれのユーザー数が少なくなり、結果として、データ量が不足するということになりなかねいので、国が中心となってシステム構築をしてほしいという気持ちはあるのですが、その気は全く感じられないのが現状です。

PHRについては、個人情報としても相当厳しい取扱いが求められるので、事業のスコープを明確にしながら、我々の参画する範囲も検討していきたいと思います。

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション