マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
02 Book Review(書評)

ベンチャーの3つの成長段階

2023年4月号のDHBRに掲載された論文「スタートアップは成長限界をどうすれば乗り越えられるか」には新規事業開発にも通じる重要なフレームワークが示されています。

従来の組織論では、企業は「探索」(exploration)モードか、深化(exploitaion)モードのどちらかにあると考えられていましたが、本論文では、この2つの段階の間に「展開」(extrapolation)という段階があることを指摘し、それこそがベンチャーの成功を握る段階と論じています。

「探索」とは、製品と市場の適合を目指す「プロダクトマーケットフィット」を意味し、顧客にどう価値を提供するかをという仮説を検証します。

「展開」とは、プロダクトマーケットフィットが会社の商品・サービスにどの程度つながるかを確認し、「プロフィットマーケット」達成することを目標とします。この段階では、需要が急拡大し、企業はプロフィットマーケットを達成するまで、限界費用を減少させながら売上を増やそうとします。

「深化」とは、立ち上げ段階での売上・利益の急増にブレーキがかかり、市場一般の水準に戻った時に、ビジネスモデルを微修正して、競争優位性を強化します。

ベンチャー企業は探索→展開→深化という3つの成長段階を経ますが、成功のためには、利益の出る成長を探索しながら、規模・範囲の経済を進化させる展開ステージが重要というのが本論文の肝であり、展開を成功されるベンチャーの特徴も紹介しています。

展開を成功させるベンチャーの特徴

①成功に不可欠な条件を理解して活用する

②厳格な展開プロセスに従う。

③戦略的な実験と規律ある実践のマネジメントが同時にできる「両利き」の組織を擁する。

不可欠な条件

【必要条件】

  • 強固な市場
  • ソリューションの再現性や独自性

【十分条件】

  • 効果的な市場参入戦略
  • 実績ある収益化アプローチ
  • ネットワーク効果と密度効果
  • リターンの増加
  • 豊富な資金
厳格なプロセス(制約理論のプロセス)
  1. 成長目標を明確にし、それらを達成するための必要十分な条件が存在するかどうかを検証。
  2. 自社のビジネスモデルを支える重要な前提を明らかにする。
  3. ビジネスモデル上の制約要因と、それらに対処するための正しい順序を明らかにする。
  4. 最大の制約要因を修正する方法を探す。
  5. 第一の制約要因が成長の障害ではなくなったら、次の制約要因を選んでまた修正する。
両利きの組織
  • モジュラー組織と自立したチーム
  • 人材の素早い再配置
  • 文化のマネジメント
  • 機会の拡大
  • 本業以外の成長の容認

新規事業を立ち上げて、プロダクトマーケットフィットをしながら、グロースの機会を窺う日々の仕事なので、自らの業務プロセスを再点検する上でも参考になる視座を得ることができました。

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション