一般的な事実として、私が取り組んでいる事業分野において、私が勤めている会社は「積極的なコラボレーションを推進」しているという評価・評判が確立しているようで、昨年は度々日本経済新聞をはじめとしたマスメディアに取り上げられることを経験しました。
コラボレーション実現のため、私自身が企業や自治体と直接的な協議・折衝をしている立場であることもあり、この点に関しては、競合他社とは一線を画する、差別化可能な独自性の高い取組であるという自負があります。
しかしその自負を「井の中の蛙」と嘲笑うかのように、「現状に満足することなく、更なる発展可能性を追求せよ!」と頬を引っ叩かれたような感銘を受けた論文があります。
それはDHBR2020年2月号に掲載されたマイケル G.ジャコバイズ「エコシステム経済の経営戦略」という論文。
伝統的な業界の垣根を超えて、多数の企業が連携を取り、複雑でカスタマイズ可能なバンドル型の製品・サービスを提供している現状を「エコシステム=生態系」ととらえて、従来の企業中心のフレームワークでは通用しない、エコシステム中心の戦略フレームワークに必要な5つの視点を提供しています。
この論文で衝撃的だったのは、以下の3点。
- 2者の企業間コラボレーションよりも、複数分野にまたがって編成された、はるかに複雑な連携のあり方(ネットワーク)が存在している
- 自らが中心であり、主要な設計者という役割だけでなく、その役割を共有したり補完者の役割に回るなど、オーケストレター(まとめ役)や原動力という役割もある
- エコシステムの参加条件を緩くするか、厳格にするかは、最終顧客にとって何が最も重要であるかという顧客軸に基づいて判断する
マスメディアに取り上げられて、鼻高々としている場合ではなく、世の中にはエコシステム経済を築くことで新しい市場の支配力を形成したり、あるいは、企業利益と公益とを橋渡しする新しい手法を創造したりしている企業が出現し始めていることに危機感を抱くべきだと。
この論文で取り上げられた事例企業に比べれば、規模もレベルも不十分なのですが、新しい協業や結び付きの考案や実践は、我々のような企業こそが、もっと先駆的に、もっと挑戦的に動いていかなければならないと考えています。
2者間の企業コラボレーションしか知らなかった昨日までと比較して、エコシステム経済という複雑なネットワークで考える視点が身に付いたことで、より自由で、大胆なアイディアを出していきたいと思います。