マキアヴェッリ先生の研究室
Openness, Fairness, and Transparency
06 Career Strategy(キャリア戦略)

ジョブ型中途採用の課題と組織マネジメント

新しい部署を立ち上げて、部門を管理するためのMTGや予算管理や決裁規程を整備する一方で、既に完了したFY20事業の決算作業も同時並行で行ってきました。

この作業を進めながら、気付かされたのは、組織としての未熟さや課題の多さ。

この原因として、これまでの人材確保策がジョブ型による中途採用が中心であったことが大きく影響しているように思われます。

多様な人材確保を可能としたジョブ型による中途採用ですが、他方で、組織マネジメントや組織文化の醸成といった点に多くの課題を残しているように思われます。

私が気付いたマネジメント上の課題と、その克服に向けたアプローチを整理したいと思います。

 

専門性ゆえのセクショナリズムの危険性

従業員のほとんどがジョブ型かつ中途採用で入社という背景を持っているため、各個人の専門性や経歴、経験などは、実に多様性に富んでいて、一人ひとりがプロフェッショナルと言えます。

それとは逆説的に、プロフェッショナルであるが故に、意思決定過程が独善的になったり、不透明になったり、という負の側面も目立っているようでした。

そこはプロフェッショナル同士の暗黙のルールなのかは知りませんが、必要以上に相手の領域に踏み込んで、白黒ハッキリさせることが何となく憚られる雰囲気もあり、いつの間にか他部門の業務や取組を把握していないし、他部門からも理解してもらえないという不可思議な状態に。

そんなプロフェッショナル達の立場や思考に忖度する必要のない「ビジネス初心者」である私は、私自身が理解できる(説明できる)ようになるまで、教えてもらい、理解できない点は確認作業を繰り返しました。

「あなたの業務に関心がある」というシグナルを出しながら、「連携・協力することでお互いに効率的かつ効果的な体制を作りましょう」という姿勢を忘れずにアプローチしました。

 

中立的な組織マネジメントの普及

多様な背景を持った人材の集合体は、その多様性ゆえに新たなアイディアや活力が自然と生まれてくるようなイメージがありますが、そんなのは単なる幻想で、知識やノウハウ(暗黙知)は適切にマネジメントして「形式知」化していくことが重要です。

こんなことは当たり前と思っていたのですが、組織内メンバーの作業の進め方やコミュニケーションの仕方などを丹念に観察してみると、バラバラで統一性が取れてないことに気付きました。

各メンバーがこれまでのキャリアで経験した業界や企業での手法やルールをそのまま持ち込んだだけで、それらが体系化されるわけでもなく、統合・整理されるわけでもなく、各メンバーが好き放題やっているというのが実態でした。

そんな業界や企業の手法やルールと無縁であった私は、マネジメントの古典とも呼ぶべき専門書の数々やHarvard Business Reviewの論文などを通じて、「民間企業とはかくあるべし」というイメージ(セオリー)だけは持っていたので、そのセオリーに基づいて、「ビジネス初心者」の錦の御旗を掲げて、無邪気に組織化・制度化を進めていきました。

特定の業界や企業のカラーを出さない、いわばビジネスの世界では「常識」となっているアプローチを行ったからこそ、抵抗や摩擦が少なく許容されたものと考えています。

 

改革は小さく、納得感を得ながら

誰もが自分の慣れ親しんだ作法や手順で仕事を進めたがるものであり、それを変えるというのであれば、拒絶や抵抗を示すことは、ある意味当然の反応。

そこを織り込んだ上で、協力をしてもらうためには、まずは自らが率先して汗をかき、負担を背負う姿勢を見せることが大事だと考えました。

そして、どんなに小さなことであっても、結果を見せる、改善を実感してもらうことで、徐々に関係者の理解と協力を得るプロセスを重視しました。

人間って、自分の欲得には敏感で、「これは自分にとって不利なんじゃないか」「私に負担を押し付けようとしているのではないか」と警戒を持たれた瞬間に、物事の進捗具合が停滞します。

そうならないように「損をするのは私なんだけど、会社全体にとってはプラスなんです」という姿勢を見せ続けることが大事です。

 

新しい組織文化を醸成していくためには、従業員の多くが慣れ親しんでいる作法や手順があります。

人の認知や行動は一気呵成に変わらないし、変えようとする、抵抗や拒絶が大きくなり時間や労力の浪費となります。

着実に合意形成を図りながら、ステップパイステップ方式でゴールを目指しましょう。

 

気を付けないといけないのは、私もまた無意識に前職(官僚組織)の手法やルールを導入している可能性もある、という自覚を持たなければいけないこと。

それだけ「組織文化」というのは、各個人のキャリアの中で、意識的・無意識的に習得し、体現されるものであることは理解しておくべきかと。

 

 

ABOUT ME
マキアヴェッリ先生
フィールドサイエンティスト。 地方自治体、航空会社、デジタル企業とキャリアを重ねながら、地域課題・社会課題の解決につながるプロジェクトのマネジメントを推進中。 #PPP #PFI #価値共創 #地域創生 #カーボンニュートラル #サステナブル経営 #パーパス経営 #EBPM #ソーシャル・イノベーション